衝撃的なのはラストシーン。歌っていた朝子が倒れ、スポットライトが当たる。起き上がらないまま緞帳(どんちょう)が下り、帰らぬ人となってしまうのだ。
驚く設定はこれだけではない。主人公の相手役であるプロデューサーが麻薬中毒者で、最後に逮捕されてしまうのだ。
出演者の関係者によると、この内容に土屋をはじめ一部キャストが疑問を持ち「これで大丈夫なんですか」と主催者側に説明を求めた。作・演出担当の甲斐智陽氏(別名高橋茂)は「舞台は刺激的な方がいい」と答えたという。濱田さんの自伝を読んだ上で出演を決めた土屋にとって、主催者側へ疑念を抱くきっかけになったとみられる。
その疑念がより強くなったのは、7月16日に都内で開かれた舞台のPRライブだ。土屋は初めて会った濱田さんから手紙を受け取った。そこには「私は舞台の内容を何も知らない」と主催者側への不信感が書かれてあり、台本が渡されていないことを知った。
このままでは本番に向かえないと思った土屋は「濱田さんの許可がないなら出演できない」と17日以降の稽古参加を見送り、主催者から「許可をもらった」という連絡が来るのを待った。そんな中、29日になって突然、土屋の稽古不参加を原因とした公演中止が主催者側から発表された。
また、このPRライブで土屋はほかにも驚くことがあった。土屋の知人によると、出演依頼を受けた際、主催者側から「濱田さんは酸素吸入器をつけていて、もう長くない」と言われていたという。しかし、目の前にいる濱田さんは元気そのもの。一体どうなっているのか。これら一連の不信感が積み重なったことが、騒動に至る大きな要因になったようだ。
とはいえ、主催者側は濱田さんの自伝を原作者の許諾が絶対に必要とはいえない「原案」にしている。チラシに濱田さんの名前を使ってPRしていることもなく、法的な意味で高橋氏側に問題はなさそうだ。ただ、濱田さんへの一連の対応に土屋が疑念を抱くのは心情的には理解できるだけに、騒動の早期解決は難しそうな気配だ。