これまで小耳症の移植手術は、患者本人の肋骨(ろっこつ)の軟骨部分を取り出し、移植用の骨を作製していたが、耳の軟骨は輪郭が複雑で細部まで再現するのは不可能だった。また、肋骨の変形が生じる恐れもあった。
今回の研究の特徴は、多様な立体物を造形でき、企業だけでなく、医療分野での活用も進む3Dプリンターを採用していることだ。
臨床研究では、患者の正常な片耳をCT(コンピューター断層撮影装置)で撮影し、軟骨のデータを3Dプリンターに取り込む。その後、合成素材(ポリ乳酸ポリマー)を材料に、へこみや突起など細部まで再現した耳の軟骨の型を3Dプリンターで作製。完成した型に、iPS細胞で作製した軟骨細胞を流し込んで耳を再生し、復元が必要な反対側に移植するという。
iPS細胞をめぐっては今月19日に国が世界初の臨床研究を承認し、再生医療への期待が高まっている。ただ、立体的な体の部位や臓器を再生させるには、体の一部として長く動かしても支障がないよう細部まで再現した「型」を元に臓器などを復元する必要がある。
妻木教授は「耳や臓器などを再生するiPS細胞を実用化するため、3Dプリンターの活用は今後増える」と話している。